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クローズアップ原発(2) ~原子力発電コスト比較~

 先週末に「原発コストは高かった」という大島堅一氏の主張と、それに反論する池田信夫氏の主張がネットで公開されていた。そこでどちらの主張が正しいのか、算出論拠を検証してみることにした。

 参照した記事は以下になるので、まずはざっと目を通してみて欲しい。

原発は高かった~実績でみた原発のコスト~」(大島堅一 YAHOO!JAPANニュース 2016/12/9)
事故処理費増え「原発は高い」 立命館大教授・大島堅一氏に聞く」(東京新聞 2016/12/11)

原子力は環境・安全性を含めると火力よりはるかに安い」(池田信夫 アゴラ 2016/12/11)

長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)


 さて両者の主張するコストを、比較しやすい様に纏めてみたのが以下の表になる。


原子力発電コスト(円/kWh

モデルプラントで計算する方法(経産省)

実績コストを把握する方法

 

池田信夫氏

大島教授

当ブログ

 

社会的

費用

福一で追加

0.3

2.9

0.3

事故コスト

事故リスク

対応費用

0.3

0.3

政策経費

1.3

1.7

1.7

政策コスト

(研究開発費)

(原発交付金)

発電

原価

核燃料サイ

クル費用

1.5

8.5

8.5

発電コスト

追加的安全

対策費

0.6

運転維持費

3.3

資本費

3.1

合計

10.4

13.1

10.8

合計

 

火力発電コスト(円/kWh

モデルプラントで計算する方法(経産省)

実績コストを把握する方法

 

石炭火力

LNG火力

大島教授

当ブログ

 

社会的

費用

CO2対策費

3.0

1.3

1.9

環境コスト

政策経費

0.04

0.02

0.0*

0.0*

政策コスト

発電

原価

燃料費

5.5

10.8

9.9

9.9

発電コスト

運転維持費

1.7

0.6

資本費

2.1

1.0

合計

12.3

13.7

9.9

11.8

合計

 

水力発電コスト(円/kWh

モデルプラントで計算する方法(経産省)

実績コストを把握する方法

 

一般水力

大島教授

当ブログ

 

社会的費用

政策経費

0.2

0.05

政策コスト

発電

原価

運転維持費

2.3

3.86

発電コスト

資本費

8.5

合計

11.0

3.91

合計




 表にしたまでは良かったのだが、どちらが正しいのか判定するのは非常に難しい。そもそも両者の算出根拠が全く異なるのだ。

 池田氏の主張は、経産省が試算したモデルプラントによるシミュレーションの数値を基にしており、大島氏は電力各社の有価証券報告書や財政資料の実績数値を基に計算している。

 私はシミュレーションはあくまで予測にしかすぎず、その仮定と結果が正しいのかを実績数値で検証されない限り意味がないと考えている。従って大島氏の数値の方を推したいのだが、今回はこちらの算出根拠を細かく確認することが出来なかったので、自信をもって正しいとは言えないのだ。私の能力や持ち時間ではこれ以上、検証の質を向上させることはできないと諦めて、中途半端だが公開することにした。何卒ご了承願いたい。

 まず原子力発電のコストについては、黄色ハイライトで示した大島氏の「事故リスク対応費用」が、池田氏が主張(注1)するように高すぎると思われる。従って本ブログでは、経産省の数値を信用して置き換え合計10.8kWh程度が、現時点で最も確からしい数値ではないかと考える。

 ただし、資本費に含まれる廃炉費用(廃止措置費用)(注2)、核燃料サイクル費用(注3)、福一の廃炉や賠償に駆る費用については、仮定の破たんで将来もっと費用がかさむ可能性があり、今後も長期にわたり検証が必要と思う。(後から高かったのだと判明しても後の祭りなのだが・・・)

 比較対象の1つである火力発電コストについては、経産省のモデルは少し高めに算出されているのではないかと思う。ただし大島氏の数値も、黄色ハイライトで示した「CO2対策費」が漏れていると思われる。

 従って本ブログでは、経産省の石炭火力とLNG火力の数値を発電量を考慮して平均し、1.9に置き換えた合計11.8kWh程度が、現時点で最も確からしい数値ではないかと考える。

 比較対象のもう1つの水力発電コストについては、黄色ハイライトの経産省と大島氏の発電原価(発電コスト)の数値が、あまりにもかけ離れているため、どちらかが間違い又は両者とも間違いの可能性がある。どちらにしても合計11.0kWhよりは小さい数値だと思われる。

 こうしてみると経産省や池田氏が言うほど、原子力発電が火力より”はるかに安い”とは言えないと思われる。また、原子力発電が事故を起こした場合の被害は、福一事故後も過小評価され、表に出て来ていない悪影響がたくさん隠れていると思う。

 テレビは小池都知事や韓国大統領にかける情熱を、少しはこの原発コストの検証に割いて、もっと国民がきちんと判断できるように、詳細に調査してもらえないかなぁと期待している。

 こちらの方がよっぽど国民の為になると思うのだが・・・


(注1)池田氏の主張は、「最大の違いは「発電コスト」(図の運転維持費と資本費)を8.5円に嵩上げし、「事故コスト」2.9円を独自に加算していることだ。」である。「事故コスト」については池田氏の主張が正しいと思うが、「発電コスト」については賛同できない。青ハイライトで示したように、大島氏の8.5kWhには、追加的安全対策費と核燃料リサイクル費用が含まれていると思われるからだ。

(注2)「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)」の76ページの右下の図「<廃炉費用の感度解析> 」で、縦軸の数値は間違っているのか? 廃止措置費用が716億円の時に、10.20円kWhになっている意味が良くわからない・・・

(注3)「使用済燃料の半分を20年貯蔵後に再処理し、残りの半分を45年貯蔵後に再処理するモデル」で計算されているが、核燃料リサイクルは今のところ実現の目途は立っていない。原発を稼働すればするほど核廃棄物が増えるが、最終処理場を増やせる目途も立っていない。日本の地震の多さを考えると、原発の事故や核汚染の可能性は、他の国よりもはるかに大きいと思われる。

※もし原発問題にご興味があれば「クローズアップ原発(1) ~川内原発停止へ向けた戦略の検証~」も読んでみてください。



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Category: クローズアップ(雑多)
Published on: Thu,  15 2016 12:00
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原子力発電コスト 池田信夫 大島堅一 モデルプラントで計算する方法 実績コストを把握する方法

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