なぜアッキードではなくアベンドスキャンダルなのか? ~森友学園問題の本質~
”音の響きなど”と書いたが、もっと具体的には”アッキード事件”だと、昭恵夫人と森友学園の関係だけがクローズアップされ、もっと重要で本質的な問題がぼやけてしまうのではないかと、漠然とではあるが危惧していたのだ。
欧米メディアが”森友学園問題”をどのように取り扱っているかに関する、(1)の記事を読んでいてそのことが明確に解り、もやもやしていたものがクリアーになった気がする。
(1)「極右と安倍首相の親密関係こそ問題の本質だ 森友学園問題を欧米メディアはどう報じたか」(東洋経済 OMLINE | 小林 恭子 :ジャーナリスト 2017/3/4)
----
連日のように日本で報道されている学校法人森友学園の国有地格安払い下げ問題。欧米メディアも2月末から報道を開始している。「安倍政権を揺るがす最悪のスキャンダル」と位置づける新聞もあるほどだ。
影を落とすのは森友学園が運営する塚本幼稚園の愛国的教育方針だ。憲法改正を目指すタカ派と評される安倍晋三首相と一定の共通点があるのではないかとの懸念が表明されている。
<中略>
安倍氏は支持率が60%を超え、与党自民党内部や最大野党民進党からも大きな挑戦を受けていないが、このスキャンダルで「衆議院解散と総選挙の時期を遅らせる可能性もある」と支局長は結論付けている。
一方、ロイターは3月2日付記事で、通常であれば安倍首相は第3期目実現も夢ではない状態にある、という。ただし、今回のスキャンダルで安倍首相にも「弱点がある」ことが判明した。スキャンダルを乗り越えられるのかどうか、「評論家たちの意見は分かれている」。
<中略>
■極右勢力との親密な関係を問題視
多くの報道で共通しているのは、極右勢力と現政権との関わりを問題視し、そこに問題の本質があると指摘していることだ。
安倍首相は参議院予算委員会における論戦がこの問題に終始していることに辟易とした表情をみせ、早期の幕引きを期待しているようだ。しかし、民進党、日本共産党などの野党にとっては追及の手を緩める理由がないだろう。日替わりで新事実が判明するこのスキャンダルの行方を欧米主要メディアは引き続き注視していくことだろう。
(※文章中のリンクは、引用にあたり外してあります。)
----
そう、”アベンドスキャンダル”の方がより安倍首相(もしくは安倍夫妻)にスポットがあたり、極右と安倍首相の親密な関係や安倍夫妻の根底にある極右思想という問題の本質に迫れると感じていたのだ。
”アッキード事件”は非常にキャッチーであるとは思っていたが、どうしても問題の本質を”矮小化”してしまう危険性を感じてしまう。
まあ、テレビでこんなに取り扱いが大きくなったら、もうそれを心配する必要は無いかもしれないが。(そこのところは、マスメディアの腕の見せ所なので、安倍応援団の狡猾な罠に嵌ることのないようにお願いしたい。)
ちょっと脱線してしまうが、”このスキャンダルで「衆議院解散と総選挙の時期を遅らせる可能性もある」”の部分にも触れて置きたい。
先月の頭に「2017年2回目の解散総選挙予測 ~民進党は内輪もめしてる場合じゃない!~」で、2017/8月下旬の解散確率を30%に引き上げたが、今の状態ならもう任期満了まで解散できないどころか、任期途中での辞任の可能性も出てきている。
だからこそ野党が下手をうったり、マスメディアが安倍応援団に懐柔されたり、最悪は”神風”が吹くことまで予測して注意喚起しながら、最終目標は”アベンドスキャンダル”だ!と言っているのである。
ついでなので、日本のメディアの2つの記事にも触れて置きたい。
誇張やミスリードが多いので、いつもは極力取り上げ無いようにしている日刊ゲンダイだが、(2)の記事は非常に良くできており読み応えがあった。(右派と左派の人で感じ方は180°異なるとは思うが・・・)
(2)「見苦しいブチ切れ答弁…森友疑惑、主役は安倍晋三である」(日刊ゲンダイ 2017/3/4)
----
安倍官邸が火消しに躍起になっている森友学園問題。火ダネは学園がタダ同然で仕入れた国有地への小学校新設だったが、疑惑を増幅させたのは安倍首相夫妻との怪しい接点だ。新設校が「安倍晋三記念小学校」の名目で寄付金を募り、名誉校長だった昭恵夫人が広告塔を務めていたのは紛れもない事実である。国会で昭恵氏の関わりを追及された安倍は「妻は私人なんです」とブチ切れ、「辞令が出ていないという意味では公人ではない」とも強弁したが、その場しのぎは通用しない。<中略>
こうした事実が表に出てきているのだから、国会で連日取り上げるのは当然だ。にもかかわらず、安倍は「レッテル貼りだ」「限度を超えている」などと、まるで被害者ヅラだが、トンデモない。背景を知れば知るほど、この疑惑の根深さ、薄気味悪さが浮かび上がってくる。 <中略>
森友学園疑惑に登場する人物は、安倍首相の支持基盤である保守系団体の『日本会議』の人脈につながります。籠池理事長は大阪幹部で、鴻池元大臣は国会議員懇談会、黒川県議は地方議員連盟のメンバー。松浦市長は自虐史観を排した新しい歴史教科書の採択を目指す『教育再生首長会議』の会長です。<中略>
だから、森友学園疑惑は不気味なのだ。政界疑獄に発展したロッキード、東京佐川急便、リクルート事件の根っこには贈収賄があった。ところが、森友をめぐる構図は本質的に異なる。便宜供与を求める側はカネがない。小中高をそろえた総合学園を描いていたという籠池は、まずは小学校新設を計画。用地は見つけたものの、資金が足りない。それで、鴻池事務所の陳情記録にあったように「土地評価額を低くしてもらいたい」「高すぎる、何とか働きかけてほしい」などと、露骨に頼み込んでいたのだ。園児の父兄らとの関係も険悪となれば、集票マシンとしても機能しない。見返りを差し出せない森友がなぜ、便宜を得たのか。<中略>
官邸はなぜ逃げ回るのか。安倍が疑惑の核心だからである。国民はそこを見据えなければダメだ。
----
青太字の部分が、「アベンドスキャンダルは幻のまま消えゆく運命か?」で、””もともと”森友学園問題”で安倍首相に鈴を付けるのは非常に困難だと思っていた””と私が書いた、大きな理由だ。
”森友学園問題”は、これまでの事件とは異なり、単純な”贈収賄”で行われた問題では無いのだ。安倍首相を含む日本会議メンバーが絡み、自分達の目指す国造りの為と称し、信条という形のないものに基づく利害が一致して起こった事件なのだ。
これでは、もし政治家の関与があったとしても、贈収賄容疑で追い込むことは容易ではない。
次に産経新聞の記事になるが、(3)の内容は日刊ゲンダイとどっちがタブロイド紙なのか判らないくらい酷い内容だ。
右派寄りや政権寄りの考え方の大手新聞があっても、私は問題ないと思っているが、(3)の記事はもう自民党や安倍政権のファンクラブの会報かと思ってしまう。(これも、自公派と野党派の人で感じ方は180°異なるとは思うが・・・)
(3)「森友学園問題を「アッキード事件」とはひどい はやる野党の追及は稚拙だ」(産経ニュース 2017/3/4)
----
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題が騒ぎになっている。
安倍晋三首相は2日の参院予算委員会で、「この問題の核心は売買価格が適正だったかどうかである」と述べたが、それ以上でもそれ以下でもない。<中略>
野党が政権追及の材料として問題に色めき立つのは当然だが、それが聞くに堪えない。
自由党の山本太郎共同代表は2日、この問題をめぐり、首相の妻の昭恵さんの名にちなんで「アッキード事件」と発言した。首相は「限度を超えている。極めて不愉快だ」と強い不快感を示したが、安倍夫妻への攻撃がひど過ぎはしないか。具体的な追及材料がなかった山本氏の目的は単なるレッテル張りだったと言わざるを得ない。<中略>
小学校の開校にあたり、安倍首相や首相夫人の名前も使われていた。「森友学園」が運営する幼稚園の運動会で、園児に「安倍首相頑張れ」などと選手宣誓させるなど行き過ぎた面はある。
そこで野党は学園の教育方針の異様さや政権との関係を印象づけようと躍起になっているが、民進党は追及の際に「ブーメラン」が2発あった。<中略>
「人格攻撃」に「印象操作」、誤った指摘とお粗末極まりない。<中略>
国民の財産である国有地の取引が、不明朗であってよいはずがなく、迅速な疑惑解明に異論はない。しかし、再三書いているように、政局優先の国会をやってる場合ではない。
北朝鮮の暗殺やミサイル発射への議論はついぞ聞かないが、なぜだ?(WEB編集チーム 黒沢通)
----
まさにこの事件を”矮小化”し、昨日「安倍首相に神風は吹くか?」で触れた、”常套句”や”根拠のない屁理屈”の典型だと感じる。
ただし、”山本氏の目的は単なるレッテル張り”という意見については、”印象操作”を狙った面があり100%そうでないとは反論できないが・・・
最後に蛇足になるが、森友学園が新設している小学校の名前に関して、テレビの映像を見ていてふと思ったことを書いて置きたい。(完全に私の憶測なのだが・・・)
さすがに安倍首相が総理大臣の間に、「安倍晋三」を冠した名称では都合が悪いという意見が出て名称変更したのだろうが、文字の並びを見ていると、安倍首相が総理大臣を退いた後に、直ぐに「瑞穂の圀」から「安倍晋三」に付け替えるつもりだったのではないだろうか?
「安倍晋三」記念小学校
「瑞穂の圀」記念小學院
さらによく考えてみたら、2行にして文字の頭をそろえていないことにも違和感があることに気が付いた。以下の考え方が正しいのかもしれない・・・
現在は、
----------------------
瑞穂の圀
記念小學院
----------------------
将来は、
----------------------
瑞穂の圀
安倍晋三記念小學院
----------------------